夜に書く

@chikachi1053 雑記とお返事

擦り切れの夜を透かす

 いま話題のつらチェック診断やってみて、2年前に別のブログで感想を書いた『フィービー・イン・ワンダーランド』という映画のことを思い出しました。昔の文章だしなんかかっこつけてる感じがするし、もはや感想文じゃなくて自分の痛いとこ晒してるだけで恥ずかしいんだけど、この映画が必要なひとに届いてほしいといつも思ってるので、当時の文章を再掲します。

 

 

 

「時々思うの。ここから飛び降りようって。いつもそんな感じなの。何でもそう思うの。ダメとわかっててもやってしまう。ギリギリのところを行ったり来たりよ」


 フィービー・イン・ワンダーランドという映画の主人公である、フィービーの台詞だ。昔のエル・ファニングが演じていてとてもかわいい女の子だ。そんなフィービーはある問題を抱えている。
 突然汚い言葉を口走ったりやってはいけない行動をとったり、急に空想の世界に入り込んだするフィービーはクラスで変わり者扱いされている。彼女の母親はそれを少し変わった個性だと愛情を持って接しながらも、どこかでうんざりしていて、そんな自分を責めている。
 結論からいうとフィービーはトゥレット症候群という精神疾患であることが最終的に判明し、ありのままを認めてくれる先生や母親の成長に助けられて病気を自覚し、きちんと向き合う一歩としてクラスの皆に自分が病気であることを打ち明ける。

 

 不思議の国のアリスのようなファンタジックでかわいいパッケージに「ジャケ詐欺じゃん!」とびっくりするくらい明るくない話なのだけど、物語はとても素晴らしいので興味があればぜひ観てください。そして今から書くことはわたしの超個人的な話なので映画の話から離れてしまうのと、病気であることが羨ましいとかそういう話ではないというのだけ、誤解を生まないよう先に記しておきます。

 


 物語の中でフィービーは何度も手を洗う。強迫観念に駆られて何度も何度も、手が痛くなるほどに。まだ病気であることがわかってなかったので、度重なるフィービーの問題行動にノイローゼ気味になっていたお母さんからどうしてそんなことをするのか責めるように聞かれて、フィービーは涙を流しながら答える。

 

「わからないの。ママには知ってほしいの」


 原因は大事かもしれないけれど、そうじゃない。なぜそうするのか、なぜそう思うのかわからないということをただ知っていてほしくて、フィービーは泣いていた。この場面でわたしも泣いてしまった。行動や思考は違えど、フィービーの気持ちを知っている気がしてものすごく苦しかった。

 

 よくわからない寂しさや不安に襲われて、もうどこかへ消えてしまいたい。時々そう願ってしまい、こういうのって病名があったほうが楽なんじゃないかと思う時がある。SNSを見ているとそういうひとはわりといて、わたしたち、きっとどうしようもなく漠然とした不安を抱えたまま生き続けて、それとなくやり過ごしたりやり過ごせなかったりしながら幾重にも夜を重ねていくのだろう。
 誰からも好かれない人間だ、なんていうのは今いる周りのひとに失礼だからそんな風には思わないようにしているけれど、誰かの一番には一生辿り着けない気がしている。生まれた時はみんな同じだったはずで、どうしてこんな風に思うようになってしまったんだろう。どこで間違えてしまったんだろう。いつかの分岐点をずっと探っている。
 人生は選んだ方の道しか結末が可視化されないから、選ばなかった方の道への期待がいつまでもしこりのように残り続ける。もしかしたら今よりも不幸になってたかもしれないけど、その場面は目に見えないから、耳ざわりのいい幻聴だけがいつまでたっても消えてくれない。もうひとりのわたしが携えているのが曇りガラスの瞳だとしても、今ここに立つわたしには知るすべもない。
 知るすべもないから、わたしは羨む。分岐したわたしを。そしてまた怖くなる。次の分岐点に怯えている。それが一体何なのか、どこで起こるものかもわからないのに、もやもやとした輪郭のない不安に迫られ、いっそ消えてしまった方が幸せなんじゃないかと塞ぎ込む。

 

 アドバイスや叱咤がほしいわけじゃない。誰かにわかってほしい。ただ不安なのだということを。ただ苦しいのだということを。どうにかしてほしいのではなくて、わたしを苛むものが何なのかわたしにもわからないということを、わかっていてほしい。それでもう何も言わないで、何も求めないで、そのままでいいんだと安心させてほしい。打ち明けることで見放されるかもとか、失望されるかもとか、もう一切心配したくない。

 

 サブカルだとかメンヘラだとか、そんな雑な定義で自嘲しながら、もっと普通のありふれた人間でいたいというありふれた苦しみを抱えて、ありふれたわたしたちはまた今日も夜をひとつ積み上げる。
 たくさんのひとの夜が積み重なったこの場所は目に見える争いなんて多くなくて、命が脅かされる心配も少ない。フィービーと違って病気でもなんでもない。そんな安全地帯にいながらひとりで勝手にもがく人間は、ただの愚か者でしかないんだろうか。

 

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