夜に書く

@chikachi1053 雑記とお返事

恋の呪いは桜色

 『リザとキツネと恋する死者たち』観ました〜。

1970年代のブダペスト。日本大使未亡人の看護人として住み込みで働くリザの心のよりどころは、日本の恋愛小説と、リザにしか見えないユーレイの日本人歌手、トミー谷。彼の軽妙な歌声が孤独な毎日を忘れさせてくれていたが、30歳の誕生日、恋愛小説にあるような甘い恋に出会うべく、リザは意を決し、未亡人に2時間だけ外出許可をもらう。だが、その間に未亡人が何者かに殺害され、さらに、その後も彼女が恋した人が“死者”となる奇怪な殺人事件が次々起こり・・・。

 

 今まで観た映画の中でもトップレベルにへんてこだった。キュートな恋愛ものかと思いきや、どんどこ人が死ぬしちょっとグロいし急に踊り出すしメロンスープとか謎料理が出てくるし終始国籍不明の日本歌謡が流れてるし…。シュール極まりない状況の中でも、真面目に愛を追い求めるあまり雑誌に彼氏募集の広告を出しちゃうリザはとてもかわいい。なんなんだろうな…。なんか突っ込みどころが多すぎるので見てくださいとしか言いようがない。めっちゃ面白いです。

 監督の日本好きをこれでもかと詰め込んでいるんだけど、出てくる日本モチーフのものがだいたい怪しい。日本語もだいたいカタコト。トミー谷の不思議な日本歌謡が耳に残ります。絶対日本人じゃないだろ。外国から見た日本ってこんな感じなのかな〜?この映画をお寿司でたとえるならば、回転寿司で回ってるカリフォルニアロールです。終盤のすごく大事なシーンの日本語が全然聞き取れないので何言ってるか教えてほしい。

 作品のポスターからして素敵なんだけど、色使いやファッション、出てくる小物がとってもかわいい!観ているだけですごく楽しい気分になれます。人はめっちゃ死ぬけど。

 

 リザの元にやってくるのは味覚死んでるマンとかやたら棚の中に入りたがる童貞男性とかで、あまりにも人を選ばないせいで変態大博覧会みたいになってるんだけど、リザは本当は単に彼氏がほしいアラサー女子ってわけじゃない。とにかくロマンチストで逆にそこが浮世離れしているくらいすれてなくて、まっすぐに愛を追い求めてるひとで、彼女が強く愛を欲しているのには理由がある。とても切ない。でもクソ真面目なのが逆におかしいんだよね。セクシーさで相手を誘惑するために自室のレースのカーテンをワンピースにしたり…。透け感どころじゃない。

 そしてリザと良い雰囲気になる人はみんな死んでいく。これでもかというくらい死んでいく。家の中では死体のテープが増えていく。途中でピタゴラスイッチみたいになって笑っちゃった。あまりにも死んでいくものだから、これはキツネの呪いなんだ〜!って怯えるリザ。死に方がわりとエグい。

 

 いろんな変人が出てくるんだけど、リザを見張るために同居する刑事のゾルタンがいいキャラしてます。イケてないぶっきらぼうな感じのおじさんなんだけど純朴な優しさがかいま見えるし、ハンカチ拾ったくらいで死ぬ世界なのにひとりだけギャグ漫画の登場人物並みに生命力が強い。この映画の見所はバランスボールの使い道とバリエーション豊かに死にかけるゾルタン刑事です。

 

 本当に変な展開が多くてめちゃくちゃにこんがらがりながら話が進んでいくけど、こんがらがった糸の先には晴れやかな空が広がっている。そんな不思議な物語です。最後の最後まで笑わせてくれるし。観終わった後、なんだか無敵な気持ちになりました。めちゃくちゃクセが強いから万人向けではないんだけど、リザが見つけた真実の愛がどんなものなのか、ぜひその目で確かめてほしいです。

 

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